麻痺にも負けず重い人形を遣わした吉田簑助さん81年の幕を下ろす

芸能

令和3年4月の公演を最後に引退を発表した吉田さん。

ご自身は全てを出し尽くしたと言い、引退を発表しました。

人間国宝でもある吉田さんにとって人形は、人生そのものだったのではないでしょうか?

吉田さんにとっての人形とは?

プロフィール

本名平尾 勝義
生年月日昭和8年8月8日

三代目として人形遣いをし二代目は父の桐竹紋太郎さんです。

吉田さんは、なんと6歳で人形遣いの世界に入りました。

戦後、1949年文楽座が二派した際、師匠の桐竹紋十郎さんについていき、旅をしながら自主公演を行っていたそうです。そして20代前半で大役を担う機会にも恵まれていったそうです。

相当な努力をしながら、大役をつかんだ喜びとプレッシャーがあったんじゃないかと思います。

そして賞もたくさん受賞しています。

1970年に芸術選奨新人賞を受賞し、1994年に人間国宝に認定されました。

いっぱい賞を受賞し、人間国宝にも認定された吉田さんですが、いきなり不幸にみまわれます。

吉田さんの不幸とは?

1998年に脳出血で楽屋で倒れてしまいます。

ご家族もお弟子さんも驚いたと思います。

脳出血とは、脳卒中の事ですが、いきなり脳の血管が破れてしまいます。激しい頭痛がおこり、

半身麻痺が残る病気です。

熱心なリハビリの末、翌年の夏の公演でカムバックしました。

奇跡的としかいいようがないですよね。そして、人形に対して情熱をもっていたんじゃないかと思います。

三人で一体を扱う三人遣いという形式が良かったのでしょうか。

麻痺を感じさせない人形遣いをみせていたようです。

情熱の行く末

2006年には5度目のフランス公演をし2007年にはフランス政府より芸術文化勲章コマンドゥールを受賞しました。

掘り下げてみると、たくさん受賞していてここでは全ては書ききれませんが、情熱がとても伝わってきます。

吉田さんを調べると文楽の女という言葉が良く出てきます。

文楽の女というのは、ただひたすら耐える女どこまでも男運の悪い女思い切ったら強い女などを指すみたいです。

そんな吉田さんの作品で有名な曾根崎心中物語、ファンの方は知っていらっしゃると思いますが、私はこの物語を読んで、とても切なくなりました。

運命に翻弄され、この世で成就しなかったお初と徳兵衛の悲恋です。

曾根崎心中物語の話

お初は18か19歳の綺麗な遊女です。ある日お初がお客に連れられて、三十三番の観音巡りをしていた所で徳兵衛と出会います。

実は二人は恋仲でした。人目を忍ばせながら、徳兵衛に最近連絡くれないといった所、徳兵衛が心苦しそうに話します。

徳兵衛が働く平野屋の主人が持参金をつけて、奥さんの姪っ子と結婚させようとしました。

断ろうとしたら徳兵衛の継母に持参金をすでに渡していたそうです。

徳兵衛は継母からお金を取り戻し、平野屋の主人に返すつもりでしたが、油屋の九平次という友人に期限付きでお金を貸してしまいます。

ところが九平次はお金を返してくれません。翌日には返さないといけない徳兵衛。

そんな中、九平次が仲間と共に、徳兵衛とお初の前にほろ酔いで姿を現します。

徳兵衛は九平次に証文をつきつけて、返金を求めますが、九平次は証文の印は偽物だと言いがかかりをつけて2人は大喧嘩になりました。

九平次は仲間5人で徳兵衛を袋叩きにします。

お初は、観音巡りをしていたお客にその場からつれさられてしまい、徳兵衛は泣きながらその場を立ち去ります。

その後、お初は徳兵衛の事が心配でたまりません。他の遊女達が『徳兵衛は偽の判をついて痛い目にあった』と噂をし、お初も心を痛めます。

いっそ、徳兵衛と死んでしまいたいと思っていた矢先に変わり果てた徳兵衛が会いにきます。

嘆く徳兵衛に二人は覚悟を決めます。

その夜、徳兵衛とお初はこっそり天満屋から出ていきます。

露天神社でお互いの体をしっかりと木の幹に縛り付け、お初の喉を切り、その後自分の喉を切り命尽きたのです。

まとめ

いかがでしたか?

とても切ない話ですよね。現代では考えられない内容ですが、当時は結ばれたくても結ばれないという事はたくさんありそうですよね。

ましてや遊女との恋は、難しかったのではないでしょうか?

高額な持参金を積んで、ようやく結婚できるという世界だったのではないでしょうか?

それが、継母が受け取ってしまったが為に、生んでしまった悲恋といえます。

そんな切ないストーリーを人形で表現していた吉田さん。

吉田さんが引退するのはとても悲しいですがお弟子さんがあとを引き継いでくれそうですね。

少し早めの引退だそうですが、これからも人形を愛し日本に伝統を残してくれると思います。

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